パラグライダーの魅力にはいろいろありますが、一番魅力的な事は、上昇できるチャンスが平等にあることと思います。太陽のエネルギーにより目に見えない熱上昇気流(thermal)が生まれる数々のドラマ。それはとても意外性がありPilotのキャリアに関係なくチャンスは平等。
この事は他のスポーツでは考えられない。たとえば、ゴルフでビギナーがいくらハンディーをもらったとしても、絶対にシングルプレーヤーにはかなわない。スキーでもテニスでも同じ事が言えると思います。ビギナーはビギナー。パラグライダーの場合、ビギナーがテイクオフしたタイミングがいいと、長年フライトしているエキスパートの方を眼下に上昇してゆく事はよく目にする事です。私は常日頃から全てのスクール生と、特にビギナーの方々へ、チャンスは平等である!とゲキをとばしています。フライト前は全員(ビギナーからエキスパートまで)thermalへの期待でワクワクしながらフライト準備に入る。たまたまテイクオフしてthermalをゲットすれば運が良かった、はずせば運が悪かったと、ギャンブル気分で、これはこれで楽しい事です。
これとは逆に、アクシデントも平等にあります。まさかと思えるアクシデントが予告なしに突然、しかもランダムにpilotにおそいかかるとゆう、のがれられない現実もあります。それは、ビギナーでも、世界チャンピオンでも、もちろん私にも、平等におそいかかります。アクシデントだけは勘や運だけでは通用しません。気持ちの良い上昇気流をエンジェルとしたら、翼をつぶしアクシデントに巻き込む悪いやつはデビル。誰だって、友にするならエンジェルに決まっている。
この目に見えない2つの顔、見破る能力が必要となってきます。パラをする前までの地上生活では危険に対する予知能力は生まれ持った五感と原始能力とで対応出来ましたが、空に対する予知能力を身に付けなければなりません。それに、我々地球人は浮遊感覚は持ち合わせていません。地上生活になれた我々地球人の感覚をいくらトレーニングしても浮遊中の思考能力は地上の1/3とも聞いていますし、私の25年のフライト体験からも、そうかもしれないねと思います。さらに、相手にする気流、風、雲は地上からは手の届かないところにあり、しかも目に見えないものです。
今回は、空の刻々と変化する、風や気流、雲の動きや簡単な翼のメカニズムを物理、気象のスペシャリストの方々が考察したとてもわかりやすい実験で試みます。そうです! 空をデスクの上まで引きずり下ろしてくるのです。そうすることによってもっと身近に空を感じとり、今まであまり関心のなかった風や雲を観察することが、とてもおもしろくなってくれたらいいなぁと思います。心は豊かになり、感性はサンジェクト・ペリやリチャード・バックの様になるはずです。
パラグライダーは翼一つで、体をむき出しのまま、空の中を滑ってゆくので、体で感じる五感以外に、飛ぶことで六感も加わり、ピンときた時の第六感となります。山カンならぬ、空カンも養われます。
気流への体験学習と、もう一つは翼のメカニズムも学習してゆくと、さらにおもしろくなるでしょう。たとえば、パラグライダーのエアーインテークの中に水を入れたとしたら、どれぐらいの水が入るだろうかとずっと疑問だったので、TAKに来た川口竜太君に24M2の翼で、インテーク内の体積計算をしてもらったら、なんと!15tの水が入るそうです。今、普及しているエアーバッグは180Lだから180kgの水が入る。この、数字を知っているだけでも、もし、水沈することがあっても、すみやかにパラやハーネスから離脱して助かる。
翼のメカニズムもとても興味深い。物理の苦手な私が飛びながら学習した事を、おもしろくやさしく子供達に教える試みは、今まで何度かやってきています。最初の試みは三田市のゆりの木台小学校5年生67名にパラグライダー教室を行った。きっかけは理科の先生がおとずれて、5年生になると雲の勉強をするので、PGの体験を通して、thermalの上に出来る雲のメカニズムも学習しようとゆうものだった。
理科の苦手な私は、小5の理科の本を買ってきて準備し、当日は、がんばって、雲の話をするが、話を聞いているほとんどの子供達の目も耳もすでに飛び始めている残りの半分の子供達のパラ体験の方へと向けられて、私の雲をつかむ様な話にはウワの空!でも、この初めての試みは大げさに言えば、パラをテーマにした立派な環境学習だったと思う。
SKY SPORTSは、自然科学を学習しながらスポーツしてゆくので、インテリジェント(知的)スポーツとも言われています。パラグライダーの翼で、刻々変化する大気の中を飛行しながら、とりまく自然環境を観察学習し、さらに、翼も科学してゆく。
このスタイルで、安全に楽しく、末長く、空を飛び続けてゆけば、いつの間にか空飛ぶ科学者になっていることでしょう。500年前、天才、レオナルド・ダビンチも実現出来なかった飛びながら科学する夢が、今、実現すると言ったら言い過ぎかな...
The following was written 500 years ago.
" For once you have tasted flight
you will walk the Earth with
your eyes turned skyward,
for there you have been
and there you long to return."
Leonardo da Vinci (1452-1519)
下の詩は500年前に書かれたものです。
『かつて飛ぶことの喜びを味わった者は、
地上を歩く時、いつも空を見上げるだろう。
なぜなら、君は、そこにいたことがあり
又、戻りたいと切望するからだ。』
レオナルド・ダ・ビンチ (1452-1519)