第1回 パラライフスタイルをデザインしてみよう

はじめに

 ピーターパン、ダンボ、魔女の宅急便、アトム。子供の頃あこがれた空を飛ぶ夢を、手軽に実現できるパラグライダー。

 これからパラグライダーをやってみようと思っている人、または始めたばかりの人が、どんな動機でパラをしてみようと思ったのか、すごく興味があります。単純にピーターパンのアニメの世界のイメージでパラグライダーの翼をつけて山の上からパッと飛べば、自由な大空へと思って始めた人も多いでしょう。

 そういう自分も、思い起こしてみれば、そんな程度で飛び始めたのです。パラグライダーは、目に見えない気流の中を自分自身の体を使って飛んでいくのです。そう! あなたはパイロットです。もう乗客ではないのです。さあ、一緒にすばらしいスポーツの世界へ旅に出てみましょう。私か教えるというより、みなさんと一緒に学んでいくのです。

カヌー
夏、カヌーをする講習生

 まず、このスポーツのやっかいなところは、スキーやスノーボード、登山やゴルフといった他のアウトドアスポーツの様に、雪でも雨でも強風でもプレーができない事です。プレーの確率は低いのです。それでも、すばらしい風と気流に出会った時の喜びは、たとえようもなく感動的で、これぞ21世紀のスポーツ! と思わず叫ばずにはいられません。

 これから、パラグライダーを21世紀に向けて付き合っていくビギナーの君達へ、末永く安全に楽しく、より健康的なパラ色の人生を送っていただくために、自分自身だけのオリジナルなパラライフスタイルをデザインしてみる事をお勧めします。そうすることによって、風の悪い日でも無理をすることなく、せっかくの貴重なお休みも無駄にすることなく、楽しく充実してくることでしょう。

パラだけじゃ体がガタガタになる?

 パラの世界では有名な、あの写真集『ウイングオーバー』を出したウリ・ヴィスマイヤーが、NHK教育テレヒのインタビューの中で言っていました。「パラグライダーが危険なスポーツ?! そりゃ、テレビの前で寝転んてビールを飲んでインスタント食品を食べてる生活の方が危険だよ」

 最近、厚生省が成人病改め生活習慣病としたのは、なるほどと感心させられます。少し古い話で申し訳ないが、私が72年からハンググライダーで飛び始め、84年にヒマラヤを飛行するまでの14年間は、他のスポーツでせっせと鍛えてきました。が、それ以降、パラグライダーのスクールとフライトに専念、熱中(?)するあまり、ライフスタイルはころりと変わり、体重も増え体がガタガタになってしまいました。

 パラグライダーは自転車、水泳、ランニングといったスポーツに比べたら、あまり筋肉とか心肺機能とかを使わない反面、神経は疲れるので、なんとなくスポーツしたような気になります。講習場をパラを担ぎハイクして飛行する時期は、まだ救われるが、一度山を飛ひ始めたらリフトや車でテイクオフへ。そしてパラをパッと広げてサッと飛び立ち大空へ。上空でかく汗は冷や汗くらい…。

 3年前、町営の室内プールができたのをキッカケに、それまでのライフスタイルを反省し、毎日のフライト、スクーリングの後でも必ず水泳、自転車、ランニングを取り入れて頑張ってみた結果、76kgの体重は68kgまで落ちて、ナイスバディとなった。が!! 体重を減らす事ばかりに気を取られ、翼を小さくすることを忘れていたので、ある日突然、機体は上空でくるくる回り始め、乱気流にもまれて回復不能。レスキューを投げることもできず、バキバキと林の中へ。エアバックのおかげもあって、運よく何事もなく自己回収をして山を降りてきたというオチがついてしまいました。何でもホドホドに…。

楽しく遊びながら体を動かす方法

スーボード
冬、TAKとSnowBoading & Ski

 普段、日常生活であまりスポーツに縁のなかった人がいきなりパラグライダーを始めるのは、かなり危険です。パラを始めようと思った日から、ます歩くことから始めましょう。

 パラグライダーは、最初に斜面を走りながら10m近い翼を頭の上に作らなければならないのです。パラグライダーを立ち上げる時に一番必要な筋肉は、背筋力だと思います。この筋肉はスポーツマンのバロメーターとも言えるもので、パワーの源です。だからと言って、単純な体操で鍛えてみても、飽きてしまって身に付きません。いろんなスポーツに親しみ、楽しく遊ぶ中で、全体的なパワーアップが大切。

 風が悪くて飛べない時こそ、これを鍛えるいいチャンスです。スクール側のOKさえあれば、風待ちの間、歩くこと。ランニング、ハイキング、テニス、カヌー、MTB、スキー、スノーボード…。パラグライダーの講習場のスロープを使ってのマウンテンボードは、スノーボードのトレーニングにもいいし、サイド・オン・スタンスの新しいスポーツ感覚があります。

 いずれにしても、スクール側の協力がいる事でもありますが、それぞれのエリアに適した他のスポーツを見付けて取り入れ、スタイルをデザインしていくことが、風待ちのストレスもなく、パラグライダーの練習がもっと充実して楽しいものになると私は思います。

 講習場でも、山でも、普段からスポーツに親しんでいるほうが、体も神経もシャープに動くので、ケガも少ないようです。が!! 元気者すぎて勢いあまってケガをした人もいるけど…。

 風待ちのスポーツだけではなく、逆にとてもいい風に出会い、一日中パラをした夕方など、軽くランニング、スイミング、テニスなどしてコンディションを整えるのもいいかと思います。快い疲れが、いい眠りを誘い、その夜見る夢はピーターパン、かもね。

まとめ

 スポーツが嫌いであろうとなかろうと、これからパラを始めるにあたり、地上でも上空でも、10mもある大きな翼を自分自身の体でコントロールするという現実が、すぐ目の前にあります。それなりに普段から体は鍛えておいた方がいいということです。 ビギナーのみなさん、今日からは乗客ではないのです!

c o l u m n
こんなこと、あんなこと…

 5年ほど前、転校生のコンちゃんが最初にTAKスクールに来たとき、「パラは腕力で勝負です。私はジムに通って腕力を鍛えています」と言ってポパイの様な腕を見せてくれたけど、毎年、夏になるとその腕力にモノを言わせて、500mもある河原のランディング場の草を刈ってくれて、地元からも喜ばれています。


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