今日で今年のワールドカップが終わる。
ブラジルから始まり、スペイン、ポルトガル、フランス、そしてシャモニー。現在のランキングは、41位。「最低でも30位以内に入らなければ!」と後半戦は頑張ったが、もうそれは不可能。ちょっとのミスが多すぎたから大きく点差がついたのだ。最後の日ぐらい、バシッと決めてやろうとおもっていた。
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タスクブリーフィング
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天気は、相変わらずの快晴。今日も逆転層が強いだろう。朝のメテオブリーフィングでは、「今日もブルースカイで、風は北東の風が弱 く、コンディションは2000m以下の高度でサーマル活動はなく、それ以上なら上がるだろう。」と。
そんなバカな!?2000mはテイクオフのレベルじゃないか!それからもう一言「谷風が吹けばコンディションは変わるだろう。」谷風が吹かなければ、タスクは出来ないのか?どうすんねん?良いコンディションばかり期待せず、今ある状況でベストを尽くせば良い。
「集中、集中、、、」いつも通りにテイクオフに上がり準備をする。アンディーヘディガーは少し遅れてきた。現在ランキングトップ。少し緊張しているみたいだ。苦節15年。いままでワールドカップで総合優勝をした事がない。俺がまだ競技者になる前に見たビデオを思いだす。ウリビスマイヤーとアンディ ーヘディガーの特集をTVで放送したものなのだが、その頃、ウリとアンディーは激しい首位争いをしていた。
結局、ウリが勝った。それからしばらく競技には出ていたが良い結果を出せなかった。2年前のアルゼンチンで行われたPWCでオーガナイザーを務め、その後、ワールドカップに顔を出し始め、また再び世界の頂点を目指し頑張り始めた(と、おもう)。そして、今年は順調にポイントを重ね現在にいたる。俺にとっては、彼もウリビスマイヤーと同じく伝説のフライヤーなのだ。
11:00 タスクコミッティー達が(タスクを決める人)動き出した。エアーコンディションは渋い感じだが、それより最終戦という事もあって慎重にタスク を考えている様子だ。
11:45 タスクブリーフィングが始まるはずだったが、20分延長した。かな り慎重になっている。
12:05 ブリーフィングが始まり、ファイナルタスクが決まった。テイクオフし、プランジュをスタートしていつもの小屋を周りシャモニーの街に帰ってきてGrands Montetsを通過しさらに北東に5kmほど行っ たところにあるゴンドラ駅を周って15kmほど北西に戻った所にあるスキージャンプ台を周りゴールするタスクだ。
「過去に経験した全てを思い出し、今持っている力を全てここに置いていこう。やれるだけの事をやって失敗してもいいじゃないか?」チームミーティングでそんな話をした。
13:30 ゲートオープンのはずだったが、少し渋いので15分延長しゲートが開いた。昨日の失敗は、今日の成功につながる。昨日のスタート前の失敗を今日はしない為に慎重に高度を稼ぎプランジュに行った。昨日よりコンディションが良いのでほとんどのパイロットがプランジュのテイクオフの後ろにある岩盤をトップアウ トし高度を保ちながら待つ事が出来た。
扇澤さんは、いち早くトップアウトしていて誰よりも高い位置にいた。みんな足並みがそろった頃に、スタート10分前になった。エアースタート(空中からスタートする事)前は、一番緊張する瞬間だ。スター トは、高い位置で切った方が後々有利になる。少しでも高く、時間ぴったりにスタートの位置につくにはどうしたらベストか?俺は時計を見ながら「スタート3分前にこの岩盤を離れスタートしよう。」と、決めていた。
14:30 エアースタートした。これは、もちろん、オーガナイザーが決めた時刻なのでみんな一斉に動き出した。 俺は、計算通りぴったりでスタートした。しかも、良い位置だ。少し遅れているもいるぞ。スタートの後、大半の選手は真っ直ぐ次のパイロンを目指したが、俺は一旦山に戻るようなかたちでパイロンを目指したのが良くて、真っ直ぐ組は高度ロスが大きく失敗した様子だ。
俺より高い位置に、フランスのパイロットが3人いる。「あの位置で行ったら楽だろうな。」しかし、今は前進あるのみ!昨日の経験から、このまま行っても問題ないのだ。小屋に着いた頃に、真っ直ぐ組が少し下方で上げ渋っているのが見えた。「俺の考えは、正しかった。」小屋のパイロンを周って、また真っ直ぐプランジュに戻りそこにあったサーマルには見向きもせずに次のポイントに入り上げ直しをした。
「今日は、トップ集団が見える位置だ。」 さらにペースを上げたい所だが、冷静さを失うと痛い目にあう。慎重に。ベストポイントはどこだ?適度に上がったところで、次のポイントに入る。バリバリ乱気流帯を抜け、いつになく低い高度で到達したがすぐに上がった。「もう少し、、、」緊張度は、高まるいっぽうだ。
そこに、アンディーヘディガーがいた。ほぼ、総合優勝が確定しているのだが今日は決めるつもりだろう。おれも、そのつもりだぜ!昨日と違うのは、トップパイロットに会っても「ついて行こう」と思わないところだ。俺は俺の飛びをする。
Grands Montetsのサーマルポイントに着いた頃に、トップ集団はようやく2600mまで上げ直してパイロン方向に行こうかという時だった。「ワンレグ、約10分の遅れだな。よしよし。」俺も速いが、トップ集団も速い。何故か、このポイントのソアリングは不得意なのだ。なんでだろうか?ここで、何機かに抜かされてしまう。
高度を稼いでゴンドラ駅を周って帰ってくる時に、シャモニーの谷の低い所に煙が溜まっている事に気がついた。この意味は、大気の状態が安定している、即 ち、低高度のサーマル活動はなくなった事なのだ。「やばい!タイムリミットだ!」焦った。再び、Grands Montetsのポイントで高度を稼ぎたかったが、来た時よりサーマルは弱く粘るだけ時間の無駄のような気がしたので、TASK−2 の教訓を活かし少し山の方に入りながらエギュードミディーのケーブルに行っ た。良い感じだ。
「はて、トップ集団は?」先行しているはずのグループが見当たらない。どこに行ったのだ?対岸の山を見たらそこにいた。バリバリ乱気流帯の所だ。「そうか!TASK−1で豪君が言っていたな、低くなったら対岸で上げ直しを して行くといいぞって。それや!いったれ!」そこに着く直前、アンディーヘディガーが低い高度でまわりこんで上がって行く のを見た。低くなっても上がるはずだ!
対地高度30mで到着したが、気持ち良いぐらいの上昇でどんどん上がった。ちょうどその時、トップ集団は上がりきっていてパイロンを取りにサーマルを離れた。「あいつら、戻ってきたらゴールできるな。」俺は、一心にサーマルを捕まえ少しでも早く上げようとした。アンディーも然りだ。上げきった頃、トップ集団は「ごくろうさま。」といわんばかりにここに戻ってきた。俺も、ゴールするもんね!
そんな中、独り悠然と高い所を飛んでいるやつがいる。スティーブコックスだ。どこで、どうやったらそんなにあがるの?と想いながら眺めていました。彼は、モンブラン側から真っ直ぐアプローチしてきた。誰も同じ事をやった人はいない。あれは、楽勝ゴールですね。う〜ん、謎や。俺がパイロンを周ってそのポイントに戻った頃にトップ集団は十分な高度になっていてゴールを目指して行ってしまった。
俺も、ここで上がりきったらゴール出来るはずだった。残念ながらタイムアップでした。来た時よりサーマルと風は弱くなっており、時間が経つにつれサーマルトップが下がっていった。
「もう高度を稼ぐ事は出来ない、それならばここからグライディングして行けるところまで行こう。」 ゴールまであと4km地点に降りた。一緒に飛んでいた、アンディーヘディガ ー、ジミーパーチャも同じ場所に降りた。
「あー、おわった!」長いフライトと長いツアーを終え、アンディー、ジミー、俺の3人、言葉はなかったが、きっと気持ちは同じだっただろう。やるだけの事はやって、このタスクの結果は11位。ゴールは出来なかったが、気分はすっきりした。
TASK1、TASK2、の失敗を全て克服したのだ。よかったヨ。これで、今回のツアーの大会が終わった。閉会式典は盛大に行われ、夜遅くに始まったのに盛り上がりました。ちなみに、帰ったのは1時過ぎ、、、
シャモニーエリアを征したのは「パトリックベロー」 2位は、最終日にダントツの飛びを見せた「スティーブコックス」 3位は2人いて、ピーターボンカネル(スイス)と通称マルコ(フランス)女子は、やっぱりルイーズ。強い。ほんまに。2位に、ボナンザに乗っている人(名前忘れた)
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シャモニーの表彰式
(左からスティーブ、ベロー、ボンカネル、マルコ) |
シャンペンシャワー
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シャモニーの女子表彰
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PWC総合優勝は、アンディーヘディガー(スイス)やりましたね、ついに。 2位、スティーブコックス(スイス) 3位、ジミーパーチャ(イタリア)女子は、ダントツの強さを見せたルイーズが勝った。総合成績は30位以内とすばらしい。 国別は、1994年以来スイスに負け続けたフランスが勝った。フランスのチームリーダー「イブ」は本当に嬉しそうでした。
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PWC表彰者
(左からスティーブ、アンディー、ジミー) |
PWC女子表彰者
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メーカーランキングは、今年もジングライダース。さすがやね。今年は、4位でしたが、来年日本チームはお立ち台に立ちますよ。きっと!
俺は、総合成績39位でした。今年は、もっと上を狙っていたのに!
悔しいから来年はもっとがんばるぞ! いやはや、おつかれさまです。