PWC 第一戦 メキシコ編 その12 (02/01/18)


2002年 Paragliding World Cup 第一戦 メキシコ編 その12

1月18日 TASK6

今日は、最低やった。ほんまに!あんじょう、しっかりせなあかんで!あんな荒れてたらあきまへんわ。

AM9:30 定刻にテイクオフ行きバスが出発した。天気は、相変わらず良い。大会が始まって5日連続で飛んでいる。きっと、今日も明日も飛べるだろう。毎日が楽しみだな。体力的にはあと1週間続いても大丈夫。
冬のトレーニングの効果だね。えー感じや

テイクオフに着いて地平線レベルを見ると、今日もやっぱり逆転層があるじゃないの。渋そうだねー。気温は、今までで一番高い。と、いう事はサーマル活動が最も活発になる可能性が高い。風向は、若干、南風が強そうなので斜面上昇風はいい感じになることが予想される。

それにしても、午前中はコンディション待ちで戦闘準備が整えばとくにすることはない。ふと、テイクオフに設置されているテントをみると、地元の子供達だろうか、30人近くパラグライダーの大会を見学に来ていた。
でも、飛び始めるのは午後からになるから、木陰で早めのランチでも食べましょうと、わんさか木陰に集っていた。その中心部がにわかに騒がしくなってきたので観に行くと、参加選手ではない観光できたパイロットのおじさんが見事なジャグリングを披露していた。オレも子供達と一緒に夢中になって見入っていた。
ジャグリングが終わって、一段楽した頃にやっとタスクが決まった。いよいよだ。

PM 12:30 タスク発表
タスクボードをみてビックリした。珍しくスピードランだ。ワールドカップでは、RACE TO GOAL(空中で同時にスタートする)が主流なのだが、Speed Run(好きな時間にスタートが出来る。これによってその日のベストな時間帯を選んで、ベストな速さを競う事が出来る)は稀なのだ。なぜならば、観ていて誰が勝つかわからないからなのだ。コツは、最初に行かない事。必ず先に飛んでいく機体を見て、奴らのいいとこどりして、ついでに抜かしてしまえば必ず上位に入る。急がば回れなのだ。しかし、みんなこの考え方だとレースは始まらないよね。でも、行く人は必ずいるのだよ。ふ、ふ、ふ、、、
タスクは、リッジを往復して台地の上に設置されたゴールに向かうものだった。タスク距離は、53.4km。キーポイントは、リッジの終わりの方にあるターンポイントから、向かい風の中、いかに速く戻って来れるか?になる。それまでは、体力温存してスパートをかけない作戦で行ってみよう。

PM 13:15 ゲートオープン。
スタートライン周辺では、誰が先に行くのか?探りあいが続いた。30分後、高い位置からスタートラインへ行く集団、約30機が行った。オレは、当初から14時前後にスタートすると決めていたので良いダミーになってくれるだろう。
PM 14:00'38 スタートライン通過
先行集団とのタイムさは約15分。序盤は慎重に行く予定だったが、急遽変更。もしかすると、コンディションが変化するかもしれないので、穏やかなうちにレースを終わらせてしまおう!と、ペースをあげる。
スタートライン通過後
は、斜面に戻らずに真っ直ぐテイクオフの後ろにあるターンポイントへ行った。この方が、高度ロスは少ないとみたからだ。案の定、大成功!先行との差を8分は縮めたはずだ。

リッジ沿いにターンポイント47番を目指すが、まだコンディションが揃っていない様子で意外と渋い。遅い時間になると西日が当たって良くなる。先行グループの半分は、リスタート(再びスタートをしなおす事が出来る)するべく戻っていったが、姑息な手段を使うと失敗するゾ。気分が乗ったら、全力で行けば絶対に後悔はしない。イケー!!!

ターンポイント47番まで残り5km付近で意外な事に気が付いた。

思っていたより、T.P.は奥の方にある。台地の上でリッジに対して風下側。乱気流が吹き荒れる場所にあったのだ。
最初に行ったグループで低く行った人は失敗し、高く行った人でも見ていて嫌になるぐらい機体が暴れている。いやな感じだ。行くしかないが、行きたくない。どうせ行くからには、出来るだけ高く上げてから行ってみよう。

3090m(台地に対しての対地高度は、約300m)で3km奥に入ってターンポイントを通過して、乱気流帯を通過する。

想像以上に、最悪だったよ。

崖縁を急上昇、急降下、を繰り返して、向かい風に向いているはずなのに突然真横の風になったり、半端じゃない気流だったが、中途半端に山から離れた方が、下降気流にはまって危険が増える可能性があるので、奥歯を噛み締めて自分自身と戦った。行くか、逃げるか、はっきりしないと危ない。
行かねばならない。 この気流を抜ければゴールまで絶対に行けるのだ。耐えて、耐え抜いて絶対にゴールしてやる!

プレイ中は、「今すべき事」を考える。今すべき事は、真っ直ぐ飛ぶように機体をコントロールする事。たったそれだけ。簡単じゃない?そう考えると、気が楽になった、が、怖いものは怖い。

ノタウチマワルこと、約10分。長い時間だった。長すぎた。永遠にこのストレスが続くのではないだろうかと思った。これからがレースの美味しい場面。
一息ついて、レースのことを考えられる余裕ができて、ゴールをひたすら目指してスピードをあげた。

最後のターンポイントを取る前に、高度を稼ぐ。コンディションが好転したのか、雲底は3600mになっていた。どうやら、コンバージェンスラインといわれるやつみたいで、風が方々から集って大きな上昇気流帯を形成している。

ここでなんとかトップ集団に追いついて、雲底をよく観察してさらに追い詰める。あとちょっとのところで、トップ集団は行ってしまった。仕方がないが、5分ぐらいの遅れはやむを得ないだろう。
と、その時、ターンポイントを通過してゴールに向かう機影発見!ハンスボーリンガーだ。ダントツのスピードで行ってしまった。すごすぎる!

PM15:42'36 ゴールライン通過
長かった。レースは1時間42分程で終わったが、5時間は飛んだぐらいの疲労感だ。くたびれたー。だいたいやね、あんなとこにターンポイントを作るのはおかしいで!まったく!
レースを征したのは、スコット(USA)だった。彼は、2年前、スペインまで一緒に旅をした事がある。いつも顔を見るたび、「もうかりまっかー?ぼちぼちでんなー」と言い合う。唯一おれが教えた日本語だ。
ワールドカップに参戦して、今年で3年目のスコット。今年はブレイクするだろうね。

さて、ほっと一息してゴールで残りのチームメイトを待ったが、誰も来なかった。
続々とゴールしてきて、結果、50名ゴールした。ダントツで行っていたハンスは、ライン手前に降りてしまったそうだ。残念、、、

さて、明日は最終日。この調子で行きますか!

これまでの結果は、また次回。

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