第6回 大空に向けて翼を広げよう!!

『You are pilot, not a passenger.』

  私がパラを指導する時、一番最初に言う言葉です。文字通り『あなたは操縦士です。乗客ではありませんよー』と気持ちを切り替えていただいて、シャレのつもりでTAKマークの入ったパイロットのボールペンを記念にあげているのですが、気の早い方は早々とパイロット証をもらえるのかと勘違いします。

キャノピー広げてラインチェーック!

 さて、今回は飛び立つ前の手順についてご説明いたしましょう。

 まずグライダーケースからパラグライダーを出します。練習場の風の方向、地形を良く観察して、インストラクターの指示で、できるだけ風に正対するように広げましょう。風のことを考えず、空いている場所に広げる方が時々いますが、注意して下さい。それとセットしている他の方の邪魔にならないように。キャノピーは扇状に広げられたらベターです。

 次にラインチェックですが、スクールによって多少手順が違うようですので、自分のスタイルが完成するまでは、とりあえず教えには素直に従った方がいいでしょう。大事なことは、ラインがキャノピーをくぐっていたり、木の枝や草がラインに引っ掛かっていたり、ライン同士が絡み付いていたりしていないかをちゃんと確かめること。これは手順のスタイルより大切なことです。

図1-A
図1-A
図1-B
図1-B

 それからライザーのねじれや、よりを戻します。トーグルとブレークコードのチェックも重要です。ブレークコードについているトーグルが、ライザーに付いているO管やプーリーの所からどこかへ遊びに行っていないかチェック。ブレークコードを後に引いて、トーグルがO管やプーリーの所にあればいいのです(図1-A)。O管やプーリーの所でブレークコードが巻き込んでしまったり(図1-B)、他のラインを通った状態で、ブレークコードをコントロールすることはとても危険だからです。

 まあ、最初のうちはきっとインストラクターの方が気づいて直してくれるはずです。とはいっても、乗客気分で甘えてはいけませんヨ。最初はラインがいっぱいで、頭の中はラインだらけになり、思わず「自動ラインチェックマシーンはないのか!」と叫びたくなるでしょうが、残念ながらそんなものはありません。

 ここ岩屋山で育ち、世界へ羽ばたいていった加藤豪君や只野正一郎君達が「いい風が来た! それ!」と翼を広げてハーネスをつけて鮮やかにテイクオフするのには1分とかかりません。そんな彼等も少年の頃にはビギナーで、最初はラインチェックにもかなりイラついていたようですが、慣れてきたら子供達がすごいスピードで綾取りをしていくように早くなるもの。何度も失敗、成功を繰り返しながら必ずできるようになります。

 ラインチェックが終了したら、左右軽くまとめて振り分けて、キャノピーに近づけておきましょう。なぜかと言えば、再度機体を広げる時、ラインを引っ張って絡めてしまうからです。

図2
図2

 次にライザーをハーネスのカラビナに取り付けます。この時、ほとんどのビギナーはライザーの持ち方と取り付け方向でまたしても「なに?」状態に入ります。これは日常、平面イメージに慣れていて、とっさの立体イメージが作れないからと思われます。地面(平面)にあったキャノピーが頭の上に立ち上がってきますから、地面にあったAライザーが上にあり、立ち上がったら前にきます。私は頭からべースボールキャップをとって説明しています(図2)。

 ライザーをハーネスのカラビナに付けたら、パラを巻き上げ、担いでみましょう。左、右どちらかのライザーをにぎって、頭の上をくぐって後にくるりと180度ラインを束にキャノピーの方へ歩み寄りながら、巻き上げていきます。

 この作業は魚を取る時の投網の巻き上げにそっくりなので、スクール生には「投網をしたことがありますか?」といつも聞くのですが、答えはいつもNO! どうもこのたとえは今風ではないようですね。でもくどいようですが、機会があればぜひ投網にチャレンジして下さい。風の強い時は、左右Bラインを40cmくらい引いて巻き上げると、キャノピーがふくらまないで楽チンです。

落ち着け落ち着けのプレフライトチェツク!

 プレフライトチェックはテイクオフ直前の機体チェックですが、同時に集中力と飛行意欲を高揚させていくセレモニーでもあります。グライダーケースからキャノピーを取り出して広げ、ラインをチェックし、ライザーをチェックし、カラビナに装着するまでの一連の手順のリズムとタイミングを、自分自分のスタイルで「正確に早く」を目標に頑張って下さい。プレフライトチェックの失敗の原因は自分自身の心の中にあります。早く飛びたいと思う心を抑制し、コントロールし、さらに集中力を高める心の訓練をリラックスしてやってみましょう。

 もしプレフライトミスでテイクオフしてしまったら、インストラクターの指示で落ち着いてコントロールして下さい。アクシデントは悪いことが2つ3つ重なることで発生します。プレフライトチェックミスの可能性の高いビギナーの方は、できるだけいい風でフライトしましよう。どんなに気をつけていても人間はミスをするものですから…。

 次はハーネスとレスキューパラのチェックについて説明します。お楽しみに!

c o l u m n
こんなこと、あんなこと…

 近頃、何かとイヤな話題の多い兵庫県ですが、今回はパラ色の話です。

 兵庫県の各高校で『いきいきハイスクール』という自由選択の課外活動授業があり、ここ青垣町にある氷上西高校は今年からパラグライダーを取り入れたのです。ほとんどボランティアみたいなものですが、秋まで5回。1回目は6月25日。授業をエスケープ?した勇気ある生徒5名は、担当の先生、さらに教頭先生に付き添われて、TAKへやってきた、赤いジャージの体操のユニフォームで元気いっぱい。全員、声を揃えて『若いイントラかと思ったらオチャンや!』『ん?!』まぁいいか。

 いい風に恵まれ、ソロで直線飛行まででき、感動で目がウルウルする生徒もいました。

 次はタンデム飛行で生まれ育った山や川、家や町を、鳥の目で見せてあげよう!


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