「2003年 飛ぶことを夢見て駆けぬけた夏」 BY 山本郁子 (03/08/24)


◆空からの招待状

 五島さんからもらった1枚の年賀状。そこには空から写し出した青垣の田園風景とたった一言。
  「飛びますか?」・・・思えばそれが私の夢の始まりでした。             

◇初TAK

 タンデムのお相手は長野さん♪
 初めて味わう空との一体感に思わず大歓声。
 さながらメーヴェに乗ったナウシカの気分で森を見れば、木々がおいでおいでしてるじゃあないですか!
 「これだぁー!!」まさにビビビッときちゃいました。

◆7/26夏の始まり

 待ちに待った夏休み。梅雨ニモマケズ、台風ニモマケズ、ついには雷鳴ニモマケズ?
 グリーンパーク(以下GP)の坂を夢中でかけ上がる日々。
 だんだんグライダーの操作を体が覚えるにつれ、「初フライト」という言葉がよりリアルになっていきました。
 少しでも具体的なイメージを持ちたくて先輩たちの初フライトレポートを読みまくるも、妙に生々しくて、
 「私の場合は一体どうなるんだろう?」そればかりが頭をグルングルングルン・・・。

◇8/24夏の終わり

 駐車場にはもうたくさんの車。みんなにとってはいつもの日曜日でも私にとっては特別な日曜日。今にも飛び出しそうな心臓を抑えながら事務所に着くと、何人もの人が私の顔を見るなり温かい言葉をかけてくれました。初フライトの前にうれしさで飛び上がってしまいそうだったのは、これ本当。「パラグライダーというスポーツは周りの人間のサポートの上にその安全性が保障されている」という朝の校長の話は深く心に落ちてきて、「私の初フライトは成功する」と心から思えたのでした。

 先輩たちが続々と山へ上がる中、一人シュミレーターにハーネスを取り付けて練習。
  この1ヶ月の思い出が走馬燈のようによみがえりすっかり感傷的になっていたら、ノンちゃんの声がしてわれにかえり、その思い出がたくさん詰まったGPへと移動しました。おNEWのフォーラス君を初めて自分の手で広げ、講習機とは違う色の鮮やかさやキャノピーのシャカシャカ感を見て触って心が躍りました。昼からはしあげをして夕方に備えるつもりでいたのに、グライダーを広げた途端、一転にわかにかき曇り雷鳴とどろく暗天へ!急いで東屋へ避難。正一郎さんとよしゆきくんがやってきて雷を追い払おうとロケット花火を打ち上げてくれたけど、逆効果で敢えなく撤収。

 事務所で待つ間も雷は鳴り続け、「今日は無理かなぁ」と思っていたら、校長が「あきらめていない」と強く言ってくれたので、校長を信じて祈るのみ!そしたら祈りは空へと届き、校長の言うとおり雷一過穏やかな風に変わったからすごい!さぁ、しゅっぱーつ♪  

 山頂に着くと、朝に会ったきりの先輩たちと合流できて、心も体もホッ。もう日没間近。いい風のうちにと急いで準備をしているつもりが、初めて着るフライトスーツに初めて付ける無線機。着方、付け方まで教えてもらっているうちに、着々とフライト準備は進む。
「初フライトを自分の力で飛んだなんて言うのは傲慢だ。うそっぱちだ。」なんて考えながらハーネスを着けていると、
「いくちゃ〜ん」という校長の甲高い声がして慌てて目をやると、我が愛しのフォーラス君が両手を広げて待っているじゃないですかぁ!
「さぁ、行こう!」と言わんばかりに・・・。
ノンちゃんと校長に左右のライザーをカラビナに取り付けてもらい、持たせてもらい、私がしたことといえばたった2・3歩走っただけ・・・。  緊張はしていたもののあれだけの人に見守られ、校長のサポート付きのTakeOffに恐怖なんてこっぱみじんでした。

 後から考えるとヘルメットのおかげもあったかも・・・。講習用のメットと違い口を覆う部分で真下が見えなーい。
  GPで正一郎さんに「下を見るから怖いんだよ!」と言われたっけ。

 ともあれ、TakeOffが成功したことで気持ちはとっても穏やか。ハーネスに座り込み、丁寧で的確な正一郎さんの誘導に方向音痴の私でもすぐにランディング場を確認。いつもなら後ろにいてくれるはずの誰かが今日はいない。気配がしない。そこではじめて 「一人で飛んでる!」と実感。顔がにやにや緩みっぱなし。機体の操作の全てが私に委ねられているのだと思うと、トグルを握る手が妙にうれしくこそばゆかったです。フォーラス君を見上げる余裕はなかったけど、スカイブルーの機体は夕暮れの空によく似合っていたと思います。無線の指示に従って場周旋回し、あれこれ操作をしているうちにランディング場が近づいてきました。

 実は一番感動したのはランディングでした。「絶対こけないぞ!」と力の入った足にふわっと地面が触り、走り抜けるつもりでいたのにうれしい拍子抜け。憧れて止まなかった先輩たちのソフトランディングが今自分のものに!というのは勘違いだろうから、それほど風がよかったんですねぇ。私の後に続いて次々にランディング場へ降りてくる先輩たち。そして、次々に私の初フライトを祝福してくれました。握手を交わすたびに、魔法のように喜びが倍増していく感覚が心地よかったです。夜のミーティングの後、お祝いに打ち上げてもらった花火と共に、私の夏は終わりを告げました。パラで始まりパラで終わった私の夏。この輝きはずっと忘れません・・・。

★感謝をこめて・・・

 校長、正一郎さん、長野さん、のんちゃん、ゆかさん、そして先輩フライヤーの皆さん、本当にありがとうございました。この1ヶ月本当に充実していました。スクールに行ける日を心待ちにする毎日。楽しくて仕方がない練習。そして何より皆さんとの出会いがこの夏1番の宝物です。なんだか至れり尽くせりの初フライトだったので、これからの方が不安だったりするのですが、頑張りますのでこれからもよろしくご指導くださぁ〜い!

☆ちょっと裏話

 朝一番、正一郎さんからはものものしいオーラが出ていた。ような気がした。正一郎さんがハーネスを調整してくれるということで、急いでシュミレーターにハーネスを取り付け装着した。正一郎さんがやってきた。なんだかいつにも増して怖い。ような気がした。私を見るなり「まじめにやって」とため息混じりに冷たい一言。わたくし至ってまじめなんですけど・・・。
  体中の毛穴から一気に汗が噴き出し、慌てて装着方法を確認した。「やばいで」とさらにあきれた声で一言。初フライト予定の朝にそんなこと言わないでよ〜と思いつつチェックする。・・・ほんまにやばかった!なんと両肩を入れていなかった・・・。正一郎さんにフライト中止宣告されるのではないかと冷や冷やしながら笑うこともできず泣くこともできず重た〜い朝のひとこまでした。


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