初飛びレポート by 塩見英久 (00/10/15)


 「いつも通りやれば大丈夫だから。それっ!」

 離陸補助をしていただいた永島さんの言葉と共に、大きな一歩を踏み出した。体がキャノピーにつり上げられ、どんどん山肌を離れていく。西暦2000年、10月15日夕刻の事でした。

 僕がTAKの門を最初に叩いたのは、夏も終わりに近付いたある休日のこと。ふと、前々から挑戦したかったパラグライダーを始めようと思い立ち、ホームページを見つけて連絡したのがはじまりでした。

 あれから一月半。グリーンパークを登り降りし、高い空を舞う先輩方を羨ましそうに眺めながら基礎練習を続けた成果が稔り、ようやく初飛行。

 飛行前の緊張感からか、車がトラブッたり(佐藤さん、ありがとうございました)してドタバタしたけれど、いまはひんやりとした風を受けながら山の稜線を真横から眺めています。

 足元を見れば、緑色の雪の結晶のような、真上からみた針葉樹の姿が。空を飛んでいると実感。

 ハーネスに腰かけ直した頃、「あの黄色い機体についていって」 無線誘導が入ってきました。

 右の方を飛んでるあの機体だな...
  おっかなびっくり右のブレークコードを引いてみたけれど、思った程曲がっていかない...

 でも、今朝、佐野さんから教わった体重移動を思い出してやってみるとやっと機体がググーッと右に曲がっていった。 上空から、幾度も通ってきた青垣町が視界に入ってくる。なんか格別の気分。

 岩屋山の裏側から出るあたりで少し揺れて体全体が持ち上げられたみたいだったけれど、すぐ収まって。ノーマルルートの稜線に乗った辺りでは少し余裕がでてきたのか、調子に乗って体重移動しながらのターンを試していたら...

 「もっと前にでてこーい。ブレーク戻せ。 もっと手ぇあげろ〜。後ろに進んでるんじゃないか?」

 校長の無線誘導が聞こえる。下を見ると丁度伐採痕のあたり。本当だ...

 後ろにこそ進んでないけれど、ほとんど前進していない...
  このまま進まないと山に堕ちてしまう...恐怖感。

 トグルを金具のところまで一杯に戻し、気休めに体を起こしてじっと待っていたら徐々に伐採痕を抜け、ランディングが近付いてきた。前の週、長野さんに男子禁制と噂の禁を破ってしてもらったタンデムの時よりずいぶん高度が残ってたみたいで、ほっと一安心。

 校長の誘導で風下側へ大きく進路修正すると、さすが夕暮れ刻。家々の灯が目に鮮やか。夕暮れの展望台からの眺めとはまた違った感じ。

 川沿いに進んで、ランディングと十分距離をとると、こんどはランディングに向かって180°方向転換。いや、270°かな?

 「もっとブレーク引け〜。大丈夫だから。体重移動〜。はい右〜左〜」 そんな声に励まされながら、右に左にターンを続け高度を落とし、ランディングに備える。

  「戻せ〜、胸まで引け〜」 いよいよ着地まで秒読み状態。 こっからが早かった。あんまし覚えてない。ぐぐ〜っと地面が近付いてきて...ドン!ドテドテドテ... とうとうたどり着いてしまった地面を走り抜ける。

 「塩見、ランディングしました。ありがとうございました!」 僕の感動の初飛び、こんな感じでした。

 その後はずっと、興奮冷めやらずの状態。しかも、その夜は正一郎さんも戻ってらして、鮭鍋にいくら丼、鹿刺しと豪勢な晩ご飯の相伴にあずかれました。楽しかった!

 もっともっと飛んで、もっともっと色んな体験したいと思います。スタッフの方々、先輩方、そして校長、これからもよろしくお願いします!


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