えま−じぇんし−・マストン!(落ちてしまいました) (99/06/09)


足立博文

 落ちてしまいました・・・

 ここんとこ週末に良い天気に恵まれ、最近「ぶっ飛び」なんぞ聞いたことも、見たこともない気象条件下でそれは起ってしまいました。

 金川号に同乗して、スク−ルに9時に到着すると「朝練」のフライヤ−がすでに10機以上飛んでいました。昨日は金川邸に宿泊したので、体調も絶好調と言いたいけど、タスマニアタイガ−(イビキがとんでもない村田さん)と3人で枕を並べて寝ていたので、少なからず睡眠不足でした。

 朝、村田さんのひどいいびきの話をお2人に言うと、口をそろえて「よう言うわ!」と言っておられたのですが、その意味は今も分かっておりません。

 校長の無線で、「朝練」の連中が下りてきたら全員2本目のフライトをすることとなり、車に分乗して岩屋山へ上がりました。

 山頂は、多くのフライヤ−で賑わっており、テイクオフまでかなり時間がかかるとゆっくり構えていたけど、先にテイクオフしたフライヤ−がどんどん高度を稼いでいるのを見ると、がまんができなくなり、南テイクオフの右から出ることにしました。

 最近のコンディションとしては、午前10時くらいまでは穏やかな状況で、11時頃から4時頃までは風が強くなり、上層の風と下層の風の向きが違ったり、ウインドシェア−がいたるところにあったりと、経験豊富なフライヤ−でも少々手こずるコンデ〜ションでした。

 今日こそは、念願の火星に向けて出発できると気合を入れてテイクオフ、南ノ−マルル−トでサ−マルをヒット、ぐんぐん高度を稼いで「今日も快調、絶好調、ばんばんいくど〜」状態です。

 ふと上を見ると20機ぐらいがオイラの上空を生意気にソアリングしているではあ〜りませんか?

 「こんなことがあってもいいんでしょうか?」、中には初級機も何機か混じっており、オイラは少々焦っておりました。

 強いサ−マルは無いけど、上空全体に拡散したサ−マルはどこへ行っても徐々に高度は稼ぐことができますが、がんがん上がらないんで心機くさい状況が続きます。

 30分もソアリングしていたオイラは、昨夜の寝不足も手伝って「生あくび」の連続、おまけに空はだんご状態、集団から離れたところで飛んでいたけど面白くないし、高度は足らへんけど「ある場所」へ向かって行動を起こすことにしました。

 岩屋を離れるとき東風だったのに、丹波少年のうえでは南西になっており、フォロ−を背負って時速45Kmで快調にアクセルオン、取り敢えずユリ山のトップを狙って飛ばします。後ろを振り返ると赤のベルテックスが追いかけてきます。

 「そんな機体に負けへんど〜、レ−シングカ−と町乗り乗用車との差ぐらいあるのに〜」としかとしたままユリ山のテイクオフを通りすぎ、山頂を目指します。

 しかし、予想以上に高度をロスし、山頂の手前で高度 400mぐらいに落ちてしまいましたが、その南の谷の上空でサ−マルをゲットし、ガンガン回して高度 900mまでは回復したけど、サ−マルはそこで売り切れ、一度岩屋へ帰って作戦を立て直すことにしました。

 くるりと機体を回して岩屋に向けると「進まへん、あかん、おっかしいな〜」、もう一度回して少し角度を変えて、「あかん、進まへん、こら〜あかんわ」、仕方がないのでそのまま五台山方面へ向かうことにしました。

 こでオイラは校長に無線連絡「エ〜校長とれますか、現在五台山の手前を飛んでいます。」、校長「それがど〜した。」「え〜、一応言っときます。」「はいはい、勝手に飛んだら?」

 この会話から判るように校長とオイラの信頼関係は抜群です。さらにそれをフォロ−するように、本田さんから「足立さん高度はどれくらい?」「エ〜 420mです。」「・・・」、校長「五台山は  600mの山やで、分かっとんかいな〜」「分かっとるけど、落ちてしも〜たんやんか」と思いながらどんどん南へ、「あ〜、向かいの山にとりつかなあかんな〜、ここはロ−タ−の中やけどな〜、やばい空域やでここは」と思ったとたん・・・・・・・「来ました!」 

 「ばあん、ヒュル、ゴ−〜、回る、回る」スピンに入ってしまいました。「いつもより回転速度が早え〜けど楽勝やでこんなもん」と回りながら潰れた側のブレ−クを3〜4回あおります。

 「あれ、直らん、回転のスピ−ドが足らんのかいな〜、相当早いけどな〜」、潰れた側に更に体重を移してスピ−ドアップ、「直ら〜ん!」

 「あかん高度があれへ〜ん、このままいったら下の岩に激突や」「早よう直さないかんがな」「そない言うたら、マラソンランナ−でイカンガ−言う人おったな、どうでもええけど。」

 そこで、少し強くブレ−クを当てます。「ぐぃ〜」「ばぁ〜ん」「直った!」

 「うわぉ」、その反動で今度はオイラを支点に目の前で機体がプロペラの様に逆に回転します。一発でライザ−は2回転ねじれ、オイラも引きづられて一緒に回ります。「もう、ほんまにむちゃくちゃでございます。」「あれ〜、助けて!」

 山肌まで 100mを切った状態で機体とオイラは縦に回りながらかなりのスピ−ドで落ちて行きます。 「ピポ−、ピポ−、ピポ−、頭の中を救急車の音が横切ります。」「回復不能や、あかんレスキュ−、レスキュ−、レスキュ−投げなあかん!」

 「しかし、このことが後で校長にバレたら馬鹿にされる。」「タスマニアの連中も絶対に笑いよるに決まっとる。」「言うことは分かっとるんや」「おれやったら、投げて〜へんな」「・・・」「投げたない!」「絶対回復させるんや〜」「昨日はうまいこと回復さしたんやけどな」「絶対投げんど〜」「死んでも投げんど」・・・

 「ばっ!」「あははは 、ひ開きました。知らんまに投げても〜た。」「くやし〜い 」

 「しかし、開いた時は想像したよりもショックは少ないな〜、そやけどえらいスピ−ドで落ちていくな、こんなん平地に落ちたらケガすると思うけど」

 機体の回転はレスキュ−を投げたら一発で止まったけど、機体が生きていておかしな挙動しよるんで、右のライザ−を手繰り寄せて、機体の端を股の間にはさみました。

 「あ〜、やめて〜危ねえ、あの岩には当たりない、やめて、外れて」「バリバリ、ガサガサ、ドン」「あれ〜、地面に立っとる。」・・・「あ〜、おもしろかった。」

 しかし、正直に言うと「正ちゃんがリパックしたレスキュ−ほんまに開くんかいな、と信用してへんかったけど、今日から信用します。」「ごめん、正ちゃん、皆さんも安心して定期的にリパックしましょう。」 



 思い起こせば、岩屋山の初フライトは 5/13 1995、初山沈(竹やぶちん)は 6/4、その日は「正ちゃん」が初めてスク−ル生の誘導をすることになった日で、かつ、被害者で初誘導の対象者がオイラだった。

 校長は南テイクオフ、正ちゃんはランディング場、「正一郎、今日から誘導しろ!」と校長、「自信ないんでしたない!」「ダメだやれ!」「あかんて、ほんまに自信ないんや」「かまへんやれ!」「ちょっちょっちょっと待ってえな〜、オイラの立場はどうなるんや、まだ8本しか飛んでへん、ど素人やのに」、校長は一切構わず「はい、足立さん準備して」「ああ・・はい、はい」、校長にしっかり無線をセットしてもらい、訳のわからんうちにテイクオフ、「あれ〜な〜んも聞こえへん、まあええか」ノ−マルル−トをどんどん下っていくとランディング場が見えてきた、「あ、正ちゃんが見える、なんか必死に叫んどるな〜、わり〜けど聞こえへんで」、「そろそろファイナルアプロ−チというやつをせなあかんと思うけどな〜」

 かなり低いところで、正ちゃんの声が聞こえました。「回せ〜、右にまわせ〜」「え〜、こんな高度で回したら川に落ちるんとちゃう?」「回せ〜、右に回せ〜」「わかった、わかった、回したらええんやろ」「・・・」「あぁぁ、見てみい川越して、もう帰られへん」、川向こうにえんどう豆畑があり、竹の支柱がいやと言うほど立っている。

 「こんなとこ下りたら、おしりに突き刺さるど〜」「お尻に穴あいたらどないするんや、既に一つあいとるのに」「こんなんやったら、正面の竹藪にしとこう、痛なさそ〜やし」「あぁぁガサガサ、バキッ」

 気がついたら棒高飛びのブブカみたいに1本の竹にしがみついてぶら下がっておりました。

 2回目の山沈は 8/30 1996、8月の上旬に初めて出たコンペ(立山らいちょうバレ−カップ)で、オ−プンクラス3位、予想外の戦績に即、調子に乗るタイプ、「今日も快調、絶好調〜」

 その日は正ちゃん達と南テイクオフで順番待ち、何故かフライヤ−が少なく直ぐにオイラの番、さっさっと準備を終えてテイクオフ、出たとたんに「ばん、ぴっぴっぴっ」「やった、サ−マルや、ここで回して南テイクオフの斜面ぎりぎりに上げていくんや〜、かっこええぞ〜」、ぐ−と大きくブレ−クコ−ドを引きました。「あかん、予想よりふくらんどる。」「斜面に激突する、もっとブレ−クコ−ド引かなあかん!」「ぐ−・・・」「あ〜・・・」予想どおり失速して「バリバリバリ、どん」「はい、おわり」、落ちた所は南の目の前、スタ沈と同じところ

 正ちゃんは無線でオイラにこう言いました。「あ〜あ〜、やっぱり落ちたな!」「分かっとったら、先に言うてえな、もう〜、ぐすん。」

 やりました3回目、もうないやろと思っとったけど、やってしまいました。

 その日は10/6 1996 「先に言うとくけど、これは危なかったな〜。」、南テイクオフへ校長達と到着すると、西のテイクオフを見ると長野教頭がテイクオフの準備中、「あれ〜、西も綺麗に風が入っとるど、ほんでまた、南も入っとるやんか」「やばい風とちゃう」

 長野教頭は華麗にテイクオフ、南の校長もすぐにテイクオフ、問題はここから、校長は何を思ったか機体を右に向けてどんどんロ−タ−サイドへ突入、「校長、そこ危ないんちゃいます〜」「ほんでも、落ちんと飛んではるな、さすが!オイラとは違うわ」

 また、悪いことにオイラは準備するのに時間がかからない、この状況を少しの間注意して見ていたら絶対に落ちなかったけどな〜。

 オイラは直ぐにテイクオフ、危ないと思うけど、校長も行ってはるし、下りてから校長に「君とはラベルが違うんだよ!」、と言われるんに決まっとる。と、どんどん右奥へ突っ込んで行きます。

 「あ〜、やっぱり校長はひどい落ち方やな〜、高度があるからええけど、オイラはあのラインを外して飛ぼう」、校長は奥まで行って、高度のある谷の上をこちらに向かって飛行中でした。

 ところが突然、「ばこん、くしゃ!」「アレ〜、きっ機体がない!」、ほとんど山肌を飛んでいたオイラはなすすべもなく、「バキバキバキ」「ドッカ〜ン」 

 注釈しときますと、機体が潰れて降下したあと、下の木に尻もちをついた状態となり、前のめりの状態から、両肩でヒノキの枝打ちをしながら頭から真っさかさまに落ちました。

 落ちていく時、5m位の大きな岩が左に見えて、「これに激突したらお陀仏やな〜」と思いながら急斜面に手と頭から突き刺さったのと、キャノピ−が木に引っ掛かってテンションが掛かったのと同時で、かすり傷もなしに第3弾は終わりました。

 事務所近くで校長に会い、「校長、何であんなロ−タ−サイドに入ったんですか?」「オイラは校長の飛びを見て、後をついて行ったんですけど〜」「落ちました。」、校長「何なんだろ〜ね」「あれは落ちても仕方ないな〜」「・・・」「はい、ぽてちん!」

 てなわけで、都合4回落ちたんやけど、「何回も言っとるように、オイラは日頃の精進がええんで、いつも助かってます。神さんもよう見てはるわ。」と最近つくづく思う今日この頃です。

 さて、今回落ちてすぐにヘルメットとフライトス−ツを脱ぎ、校長に無線を入れました。「あ〜足立です。校長とれますか?」「はいはい足立さん、なに?」「え〜、落ちました。」「どこへ」「たぶん、五台山の近くの山中です。」「え〜山沈なの?」「残念ながら、レスキュ−投げてしまいました。」「そう」「怪我ない、あるわけないよな〜、毛がない、よかったね、あっはっはっはっ」「・・・」「そんな訳の分からん機体に乗るから落ちるんや」「あハハハハ」

 「校長、オイラはブンブン回って落ちて、ひどく気落ちしてるんやで」「毛がないとはなんやねん、オイラはまだケガのこと何にも言うてえへんのに」とは思ったけど、後のことを考えて「はい、はい」と言っときました。

 ここからは校長は頼りになります、直ぐにみんなに無線連絡してくれて、オイラのレスキュ−に向かってくれることを知ったので、大変有り難かったです。

 腹立ったんで、連絡なしに自己回収をしようと思ったけど、「実は、オイラは高所恐怖症なんや」3mの木が登れましぇ〜ん。

 さらに、校長からの無線で「足立さん、タスマニアはひどい連中やで、センタ−リングしてまだ高度稼いどる・・」「わっかるわ〜」

 「なんちゅやっちゃ、オイラが瀕死の重症かも知れへんのに」、その後も黙って無線聞いとったら、TAKの連中は好きなこと言いよる。

 「校長、こちら長嶋です。いまから火星人の探索に行きます。」、電波が弱くてオイラには校長の無線は聞こえず。「・・・」「はいはい、ほんでも、救出にいって攻撃されたら、反撃してよろしいか?」「・・・」

 「なんちゅやっちゃ、オイラのこと全く心配してへんな」、さらに、さらに、オイラの無線の電池が切れかかって、レスキュ−隊に居場所を知らせることができないので、機体をそのままに山を下りることにしました。(これが大間違いで、後で皆さんに大迷惑をお掛けしました。)

 オイラはとことこ山を下って、学校らしき建物を見つけ、「ここやったら電話もあるし、事務所に居場所を言ったらええわ」と電話しました。

 「あ〜、ゆかさん、足立です。」「はいはい、足立さん、今どこ」「あかん、ゆかさんもオイラをぜんぜん心配しとらんな〜、電話の奥で笑いをこらえとるな〜」「え〜、小学校や思ったけど、香良病院です。ここにおるんでレスキュ−隊に連絡をお願いします。」「はいはい、プツン・プ〜プ〜プ〜」「まだ話の途中やのに、かなわんな〜もう」

 「前からうすうす感じとったけど、夫婦でオイラを馬鹿にしとるな〜」「オイラは火星に帰ったら皇族やど、それも直系の」「これがオイラの身内に知れたら宇宙大戦争が勃発すること知らんな〜」 そうこうしている内にレスキュ−隊が香良病院に到着、村田、金川、井川、萩、にんじゃ服部くんのみなさま有り難う。

 まさかそれから機体を探して山中を4時間もさまようとは、「ごめん、失礼しました。少し反省してます。いやほんと」

 山中で力を発揮したのは井川君です。彼はこう言いました。「山の捜索は固まらないと、ちりじりになるとややこしいです。」、何時間も機体が見つからずくたびれているとき、「一度、山をおりた原点まで帰って、再度下りた道を反対にトレ−スしたほうがいいです。」

 さすが、井川君最近パラもうまくなっとるけど、なかなかええアドバイスやな〜、後は彼女だけやな、頑張りや!

 オイラを含むレスキュ−隊全員、くたびれ果てて二度下山、そこへ近くで待機してくれている高橋さんを呼んで、再度作戦の立て直し。

 おにぎりを食べて、水分を補給して再々度挑戦15分、「ありました。すぐ近く、オイラが道を間違えんかったら30分で終わっとるな」

 しかし、現場に着いてから、パラとレスキュ−パラシュ−トの回収はほぼ一人で木に登ってしてくれた金川さん、「あんたはえらい、そんだけ木登りがうまいのんサルが見たら、サル、後すざりするで!」「誰にでも取り柄はあるもんや」「次からクロカンは一緒に行こう。」

 ここらで、オイラの秘密をお詫び方々お教えしますと、実はオイラが五台山にこだわったのは、訳があります。

 弥生時代の前期にオイラのおじいちゃんが地球へ来て、火星と地球の往復のためのランチャ−台を氷上山中に5台こしらえたことは聞いていました。

 しかし、火星の資料庫が大震災の火災で焼失し、ランチャ−台の場所が分からなくなっていたため調査隊員のテポドン(地球名:りゅうた)に命じて、調査を繰り返していました。

 幸運にも5月の連休中に発見し、火星への帰還も射程距離内と、オイラは少々興奮しておりました。みんな知らんかったと思うけど「五台山」の名の由来はそういうことですわ。

 「テポドン」は今、TAKパラスク−ルの校長の息子(りゅうた)ということにしてますが、じっくり顔を見たら地球人と違うことが分かります。午前12時を過ぎると、彼は寂しさのあまり火星の方向を見て吠えます。

 校長夫婦は可哀相に、これを夜泣きと勘違いしてはりますわ・・・りゅうたが振り回しとる、おもちゃの剣もビ−ム光線銃も実は本物ですが、ちょっと危ないんで使い方を教えてません。

 話がわきへそれましたが、オイラの火星への帰還は後日、エアコンデ〜ションのいい時に再チャレンジしたいと思います。「ほな、さいなら」



    日   時   5月30日 1999
    テイクオフ   10時15分
    墜   落   11時15分
    場   所   五台山手前の谷(香良病院の裏山)
    機   体   グラディエント アワックス26
    パイロット   足立博文(本名マストン)

                                                          

PS オイラが落ちた晩、事務所では何故か「宴会」が始まりました。校長も断酒のわりによく飲んでおられ上機嫌でした。「何でやね〜ん」初開傘の記念に校長から「Tシャツ」をプレゼントされ、宴会出席者全員からTシャツにサインをしていただきました。オイラは心のなかで一人ごとを言いました。「オイラは今日落ちたやで、みんななんで上機嫌なんや」「信じられへ〜ん」

  記念撮影
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