初フライトリポート 北山 良 ('05 03/21)


自力で空を飛ぶことは、人間の究極の願望の1つである。
その夢の第1歩が実現した。 初フライトが叶った2005年3月21日は私にとって、おそらく 忘れることのない記念日となった。
春の足音が感じられる19、20、21日の三連休を利用して、昨秋以来幾度か通ったTAK PARAGLIDER SCHOOLの講習に参加していた。
私は、20日朝校長から「明日、 山飛びする」と告げられた。自前の道具は届いたばかりの新品。
「ハーネスに うまく座れずパニックに陥る人もあるので(うまく座れるよう)練習しておくように」と指示があった。
『誰もが飛んでいる。俺だって飛べる!』
と自分に強く言い聞かせたが、少しあった自信はそのあとスグ裏返しに戻ってきた。

3月19日
初心者の練習グランドに校長以下スタッフと上級者が前触れなく移動してきて練習が始まった。
今日は一人ひとりビデオ撮りをし、皆で技能検討会を開く為だった。
上級者の諸道作はスピーディだった。
一方私は基本のラインチェックに手間取るなどし、段々とアセリが高まっていった ようだ。
ラインがキャノピーに絡み巻き「ストップ」の指示がで、次いでライズアップ時パラが 大きく傾き失敗。
ビデオは私の未熟さを赤裸々に映し出していた。
夜は幾度か目が覚めた。

3月21日
私の心はまだ動揺していた。
「今日の初フライトは辞退したい」旨、校長に伝えた。
「今日ほどの(初フライトに適した)天候はそうない」と校長は水を向けてくれた。
しかし その表情はいつになく真剣で私の反応を伺うようにも見えた。どうした訳か「やります」と ハッキリ返答していた。
心の中で何かを振り払ったのだった。

午後5時スギ、岩屋山は薄暮が迫っていた。
白赤の吹流しは殆ど揺れがなく一定の角度を保ったままである。
校長が近づき「いい風ですよ」と伝えてくれた。

 

 

 

 

担当インストラクターの、のんちゃんは二度 飛び出し後の留意点につき注意してくれた。
『俺も飛べる!』そう自分にいいきかせた。
意外とドキドキはない。むしろ冷静な心境だったと 自分では思っている。

 

 

 

 

 

 

 

スタートした。

数歩後

足が空を蹴る。 浮いた。 座れた。

 

 

 

 

 

視界が広がりよく見渡せる。トグルに力強いテンションが伝わる。信じられない程恐怖感はない。
爽快感で体が満たされた。
次に地上にいる正一郎さんからの指示が無線を通じはいる。数百米も離れているのに「手に力 入りすぎ、一度両手を万歳の位置まで挙げて」等。
まるで隣に居て見ているかのような的確な 指示が次々と入る。正一郎さんの能力には全く驚いてしまった。
大箕山が近づき、もう少し空中にいたいと思っていたのだがフライトは終盤に・・・
スタンディングポジション、地上が真近となり少し緊張したが無事ランディングできた。


まず正一郎さんが走り寄り「おめでとう」と握手をしてくれた。
無線を通じのんちゃんからの「おめでとう」の声が入る。
先に着陸していた先輩たちから声が かかり拍手をもらった。その1つ1つが胸に染みた。

とにもかくにも初フライトを果たすことができた。


今回二回も入念なタンデムをしてくれた校長。
直前、真顔で念を押すように留意点を伝えてくれたのんちゃん。
初心者が安心して操作し、的確な指示でランディングまで導いてくれた正一郎さん。

空を飛んでみたいという夢を叶えてあげたい。

飛ぶ喜びを分かち与えてあげたい。

そんなスタッフの皆さんの想い、励まし、心配が、湧水が湧いてくるように、じっくりと そして確かに私の胸の中に満たされた。
校長、正一郎さん、のんちゃんそして皆さん今日は 本当にありがとうございました。
感謝の気持ちで一杯です。 これで皆さんの仲間に入れてもらいました。未熟さも体験しました。
基本練習を大切ににし、 齢も齢(62歳)ですので楽しく空中散歩が続けられたらと思っています。
北山 良


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