「 ワレ　単独初飛行に　成功セリ！ 」　安田さん

　 謹啓　秋冷の候　お父上様　お母上様におかれましてはお元気でお過ごしのことと拝察申し上げます。
　
　 先日は、地元の新米をご恵送賜りまして誠にありがとうございました。とてもおいしゅうございました。久方ぶりに、故郷の味と香りを堪能させていただきました。

　さて早いもので、新しい任務地、ここ空軍「丹波航空隊　岩屋山駐屯地」に配属になりまして２ケ月半が過ぎようと致しております。

着任時に、沢の音色で心を癒されていたあの暑さもなつかしゅう感じられます。今日、見上げる丹波富士は色づきはじめ、秋から冬の準備へと追われているように感じられ、日に日に季節の変化を実感させられる毎日でございます。

近況報告も、無礼を致しましてご心配をおかけいたしておりますことと存じますが、どうぞご安心下さい。配属されました丹波航空隊岩屋山飛行学校は、日本の航空隊の最高司令官を務めるＴ野元帥が学校長をも兼務するめぐまれた環境下にございます。

自らの卓越した技術と実績を背景として根拠付けられた飛行技術、安全教育はもとより立派な飛行少年？になるための心の教育をも拝受させていただいております。また、その他の教官のみなさまも、先輩方もすばらしい方々ばかりで、同じ空間で訓練をさせていただくことを誇りに感じる毎日であります。

　すばらしい戦績のＳ一郎教官には大変おこがましゅうございますが、なぜか、お会いした瞬間、同じ匂いを感じました。互いのつぶらな瞳・・　きっと前世では、モンゴルで互いに横綱として相撲をとっていたのでは？と感じさせてくれ、非礼とは存じますが、この親近感が叱責も飛ぶ厳しい訓練を耐えさせてくれたものだと痛感しております。

　日々たいへん丁重な指導をいただいておりますＮん教官は、厳しい中にも昔つきあっていたアノ子との楽しい日々を思い出させるような、そんな日常感を感じさせてくれるとても幸せな空間を作り出してくれます。「大阪で生まれた女」やさかい？でしょうか・・

　 Ｎ野教官は　昔　お会いしたような気がしてなりません。
そうです。ハタとひざを打ちました。授業そして修身や道徳、しつけにはとても厳しいけれど女の子にはすぐに目じりを下げる、ちょっとエッチなアノ小学校の教頭先生そのものです！

　そして　Ｙか教官・・厳しい訓練から学舎に戻ると「お疲れ様っ！」ではなく必ず「お帰りっ！」のことば・・母上様の愛情のようなあたたかさで包み込んでくれて疲れた体と心を癒してくれます。

こんな教官のみなさんに支えられて、心身とも幸せを感じながらあっというまに２ケ月半がすぎてしまいましたが、本日、突然に単独初飛行の日はやって参りました。この日は、世界中の青空を集めてきたような秋晴れの願ってもない快晴の天気と北東の微風・・と初飛行には文句のつけようのないお天気でございました。

　幼少のころから　母上様に　「神経質な子ね・・」とよくいわれていたことを思い出します。

　
三つ子の魂　百まで・・今もかわりません。「全日本小心者選手権」が開催されたなら　楽々と「近畿地区代表」の座は手に入れてしまいそうな逸材です。だから当日は、とても緊張すると思っていました。

　しかし、なぜか非常に落ち着いている自分がいました。今もって不思議ですが、おそらく状況把握ができていなかったものだと思ひます。いわゆる、幼稚舎の入試の日みたいな感じ・・・ではなかったんでしょうか。

　 ぼぉ〜と　その場に　突っ込んでいってしまうアノ感じ・・・・

　小さいことにはくよくよ悩むけれど大事なことには鈍感・・そんなＢ型の中でも特異な性格に生んでいただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

離陸も神の手のお力添えを賜り、離陸地点と着陸地点からの双方向からの無線誘導を頂戴し、すべてにご教導いただいて飛行は順調に？続きました。

「順調です！」

「なんら問題ありません」

「心配はありません」

安心させる無線が小心者にはとても心強く、ゆったりとした気分を保ちながら着陸地点へと向かわせていただきました。

あっというまの着陸姿勢。そして　難？着陸。

大勢の仲間たちが駆け寄ってきてくれてハイタッチ！

離陸から着陸までみんな自分のことのように心配し、フルサポートし、そしていっしょに喜んでくれました。なんてすばらしい仲間なんだ・・そう実感させてくれる幸せな瞬間でした。

心の中ですぐにこの感激を打電申し上げました。 　

　ワレ　単独初飛行ニ　成功セリ！

　　　　トリ！トリ！トリ！

　トリになった気分でした。

まさしく「すばらしい天気と風　そしてすばらしい師と仲間が　単独飛行を実現させてくれました。」

学校長はじめ　教官のみなさんありがとう！そして　すばらしい仲間たち・・ありがとう！

この日の記念すべき純白のヘルメットにはみんなの「おめでとうメッセージ」を書いていただきました。お陰さまで、やっと飛行訓練のスタートラインに立つことができました。まだまだ　ご心配をおかけすることばかりではございますが、今後とも　「安全は　すべてに優先する」という基本理念を根幹にして、飛行技術の向上と増上慢の精神を忘れることなく、こころ豊かな、謙虚なる飛行？少年に成長すべく研鑽してまいる所存でございます。

　何卒従前同様、故郷よりお見守りいただきますようお願いを申し上げます。

　寸著で甚だ非礼とは存じますが、取り急ぎ単独初飛行のご報告を申し述べます。

謹白